ペルシア絨毯に見られる基本デザイン(文様)

シャーアッバス文様
16世紀サファビー朝の第5代の王シャーアッバス1世の名に由来します。ペルシア絨毯のデザインの中で最も多く使用されてきた文様で、中心となるバラやユリの花の断面をデザイン化したものです。パロメット文様とも呼ばれています。
ゴルダニ文様
花瓶文様と呼ばれ、特徴のある花瓶が中心となり花や生命の樹などが活けられる文様です。上部にメフラブを持つメフラブ・ゴルダニは、花瓶文様が配される代表的なデザインです。
エスリム文様
シャーアッバスデザインの中心部を占めるフィールド上に躍動的に描かれる蔓の曲線文様です。中国から伝来した日本の唐草文様はインドを介して繋がっていると言われています。
また切れ目のない曲線は永遠の生命を表すとして、ペルシャの人々に愛されてきた文様でもあります。
メフラブ文様
イスラム教のモスクにある尖塔をかたどったデザインと云われており、イスラム教徒がメッカの方角に向かい、一日5回の祈りの時にこのデザインの小さなラグが使われています。彼らにとって神聖で特別な意味を持つ文様です。
ボテ文様
風になびく糸杉や松ぼっくり、あるいはゾロアスター教の炎をモチーフにした文様と言われています。ペルシア絨毯の文様の中で、ボテ文様ほど長期にわたり、あらゆる産地で使用されたものは他になく、「尊厳」を象徴するものとして広く親しまれてきた文様なのです。
大英帝国によってヨーロッパにも広められたペイズリー文様は、植民地のインドから持ち帰った文様ですが、ペルシア文化の影響を大きく受けたインドに伝わったとも考えられます。
糸杉文様
糸杉は西アジアから地中海周辺地域の乾燥した土地に多く見られる常緑樹です。一年中枯れることのない糸杉が、天に向かってまっすぐ伸びるさまに神とのつながりや、永遠の生命を意味する象徴として多用されてきました。
生命の樹文様
左右に豊かな枝を広げ、花や実がなり、太い幹が大地にしっかりと根を下ろして天に向かって伸びようとするこの文様は、絨毯のみならず工芸品や建造物の壁面などに多く使用されてきました。
生命の喜び、子孫繁栄、長寿願望などの象徴として、草木の少ない土地に生活する人々の豊かな緑への憧れがうかがえます。
ゴンバット文様
イスラム教モスクの天井に見られる同心円状に拡がるデザインで、モザイク文様に由来しています。ある意味ではペルシア絨毯のデザインの原型とも言え、メダリオンやフィールド全体のデザインとして使用され、イスファハン、タブリーズ、ナインなどの絨毯に多く見られます。
へシティ文様
英語ではパネルデザインと呼ばれ、いくつものタイルを並べたようなデザインです。その一枚一枚に伝統的な文様である生命の樹やミフラブ、ボテ、ゴルダニなどの絵柄を規則的に取り入れた文様です。
ハンティング文様
狩猟は古くからペルシアの王侯貴族に親しまれた娯楽であり、アラブ馬を乗りこなし平原にライオンや鹿などを追い出し、弓、剣、槍で仕留めるスリルに満ちたゲームでもありました。この文様を用いた絨毯は、ミニアチュールを下絵としたものが多くみられます。
ピクチャー文様
ペルシア古典文学の詩や物語を題材とした細密画をもとに織りあげられた風景画です。鳥や蝶の他多くの動物たちも登場します。
イスファハンの名匠であるセーラフィアン工房の作品にもよく見られる文様の一つです。
ギュル文様
イラン北部に住む遊牧民、トルクメン族の伝統的な文様です。幾何学的な八角形の繰り返しの文様ですが、部族によりそのデザインに特徴があります。パキスタン絨毯によく見られる図案でもありますが、オリジナルはトルクメンと言われています。
マヒ文様
英語ではフィッシュデザインと呼ばれており、幾何学的連続文様の中で、一部その形が魚を連想させることからマヒ柄(ペルシア語で魚を意味する)と言い、タブリーズやビジャーの絨毯によく見られる文様です。
オールオーバー文様
中心となるメダリオンがなく、同じ文様の繰り返しがフィールド全体を埋め尽くしているデザインです。花束や花瓶文様、ボテ(ペイズリー)文様、幾何学文様、縞文様などが多く見られます。
花鳥文様
イスラム教では偶像が排斥されたため、具象的なデザインとしてゴルボルボルと呼ばれる花鳥文様を全体に散りばめたデザインが人気を集めました。このデザインの絨毯の代表作は、イスファハンの名匠セーラフィアンの作品に見ることができます。
ゴル・ファランギ文様
ペルシア語で「ヨーロッパの花」という意味の花束文様のことです。もともとペルシアの古い絨毯にはなく、フランスがイランに強い影響力を持った19世紀に生まれ、美的吸収力の旺盛なイランの絨毯デザイナーたちが、新鮮で美しい表現方法として用い、流行したと言われています。